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第67回会議(米政権、天下り問題)

米政権、天下り問題 「報道と読者」委員会

報道と読者委員会

「報道と読者」委員会第67回会議。(奥左から)清水勉委員、後藤正治委員、三浦瑠麗委員=11日、東京・東新橋の共同通信社

 共同通信社は11日、外部識者による第三者機関「報道と読者」委員会の第67回会議を東京・東新橋の本社で開き、3人の委員が「トランプ米政権」と「文部科学省の天下り問題」の報道をテーマに議論した。

 1月に発足したトランプ米政権について、国際政治学者の三浦瑠麗(みうら・るり)氏は「批判すべき内容に事欠かない」と指摘。一方「危ういという記事ばかりを読むと、何が政権の一番の脆弱(ぜいじゃく)性なのかが分からなくなる」と警鐘も鳴らした。

 ノンフィクション作家の後藤正治(ごとう・まさはる)氏は、トランプ大統領が駆使するツイッターに関し「権力者が使うと、自己主張のメディアになる」と懸念を示した。開かれた国といった米国の良い側面が衰退しているとして、歴史や文化的な背景などを考察する報道を提案した。

 弁護士の清水勉(しみず・つとむ)氏は「(権力とメディアが対立する)米国の状況を示しながら、日本ではどうなのかも報じるべきだ」と強調した。

 天下り問題では清水氏が「(文科省OBの)席を確保するために大学があるように思えてしまう」と述べ、大学の在り方と官僚の再就職問題という2本柱で取り上げるよう求めた。三浦氏も「大学に対する負のスパイラル(連鎖)を解き明かしてほしい」と要請。後藤氏は「他省庁の実態も知りたい」と語った。

米政権、天下りで問題提起  「報道と読者」委員会

 共同通信社の第三者機関「報道と読者」委員会の第67回会議が11日開かれ、委員3人が「トランプ米政権」と「文部科学省の天下り問題」の報道を巡り議論した。国際政治学者の三浦瑠麗(みうら・るり)氏は、トランプ大統領批判に偏りがちな報道に注意喚起した。ノンフィクション作家の後藤正治(ごとう・まさはる)氏は変容する米国を歴史的、文化的、哲学的に考察する報道を提案した。弁護士の清水勉(しみず・つとむ)氏は米国での権力とメディアの対立を踏まえ、日本の現状を検証する重要性を訴えた。

【テーマ1】トランプ米政権

危うい時代--後藤氏 日本はどうなのか--清水氏 批判偏重に懸念--三浦氏

2月の日米首脳会談でトランプ米大統領(右)と握手する安倍首相=ワシントンのホワイトハウス(共同)

2月の日米首脳会談でトランプ米大統領(右)と握手する安倍首相=ワシントンのホワイトハウス(共同)

 ▽メディアと対決

 後藤委員 トランプ米大統領は1日平均10回ぐらいツイッターでつぶやき、2千万人以上のフォロワーがいる。権力者が使うと、自己主張のメディアになり、危うい時代との印象だ。そんな中、イスラム7カ国からの入国を禁止した大統領令に司法界が抵抗し、米メディアもひるまず批判したという報道が印象的だった。

 清水委員 権力とメディアの対決を巡り、米国では昔の「赤狩り」の時代のようになってはいけないとの意識がメディア側に非常に強い。米国の状況を示しながら、日本ではどうなのかも報じるべきだ。

 沢井俊光外信部長 米国でトランプ氏の土俵とメディアの土俵は最初から違っている。米国にはメディア報道はうそだと決めつける人がたくさんおり、米メディアは悩んでいる。日本はまだそこまでいっていないと思うが、どうなるか分からない。米メディアの苦闘も交えながら、トランプ政権の実情を伝えていきたい。

意見を述べる三浦瑠麗委員=11日、東京・東新橋の共同通信社

 三浦委員 トランプ政権には批判すべき内容に事欠かない。だが、トランプ政権が危ういという記事ばかりを読むと濃淡が分からず、何がトランプ政権の一番の脆弱(ぜいじゃく)性なのかが分からなくなる。

 沢井外信部長 トランプ政権のニュースは面白いものがたくさんあるが、節目で政策課題などをまとめて検証することが必要と思う。

 ▽米国とは何か

 三浦委員 論説で入国禁止令を批判する際に、日本の移民政策と米国について二重基準になっている。米国の人種や宗教差別を書くのはいいが、適切に同じ物差しで測っているのか、と思った。

 後藤委員 米国は矛盾を抱える国だが、一方で希望の国でもあった。開かれた国、自由の国という良き面が衰退していっている。論説で米国とは何かをテーマに歴史的、文化的、哲学的に考察する連載を読みたい。

 橋詰邦弘編集委員室長 米国とは何かという大きなテーマを検討していきたい。

 ▽日米関係 意見を述べる清水勉委員=11日、東京・東新橋の共同通信社

 清水委員 日米問題になると発言が慎重になるのは分かるが、それにしてもあまりにも記事に実名が出てこない。「複数の日本政府関係者」では実在性に疑問が生じかねない。実名を出さないにしても、もっと立場が分かるような表現ができないかと思う。

 小渕敏郎政治部長 実名で発言者を示すことは大事だと思っているが、実名では本音に近い発言をしてもらえない。インタビュー記事を出すなど工夫したい。

 三浦委員 日米首脳会談で米国内での雇用創出に協力するため、安倍晋三首相が包括的な政策パッケージ「日米成長雇用イニシアチブ」の提示を検討していると先行して報じたのはいいが、米国は相手にしない内容だ。トランプ政権が打ち出した国境税は伝え方が難しい。

 小渕政治部長 トランプ政権の対日貿易赤字批判に、日本政府がどう対処しようとしたかを報道で示せたと思う。首脳会談に向け、どんな調整が行われているかは、いち早く報じる必要がある。日米経済対話でも浮上する問題だ。

 東隆行経済部長 国境税は現段階で具体的なものが見えない。実際の税率が出れば、日本企業への影響などを報じていく。

意見を述べる後藤正治委員=11日、東京・東新橋の共同通信社

 後藤委員 トランプ政権の入国禁止令を欧州の首脳は痛烈に批判しているが、安倍首相は全くコメントしない。ゴルフで仲良くするのもいいが、言うべきことを言わなければ、敬意を払われる関係にならないと訪米関連の記事を読んで思った。

 小渕政治部長 戦後の日米関係は対米追随と議論されてきたが、特異なタイプの米大統領に日本はどう向き合うべきか留意しながら報道してきた。さまざまな意見を紹介し読者に考えてもらう機会を提供するのが大事と思う。

 ▽報道の課題 入国禁止の米大統領令を巡る動き

 清水委員 入国禁止の大統領令の一時差し止めを命じた連邦地裁判事の紹介は、なぜこういう判決を書いたかがよく分かる。米国の議会制度を説明した衆院事務総長のインタビューは、米国で議会が果たす機能が分かり、ともにいい記事だった。どこがブレーキ役を果たすのか、日本との権力構造の差を説明するこうした報道があるかないかで、理解度が違ってくる。ただ、議会の説明記事はあまり掲載されてなかったのではないか。

 三浦委員 世論調査では、日本が米国の雇用創出に協力することに高い支持が示された。日本国民の多くが、新聞が報じていること、政府が言っていることを何となく納得すべきものとして見ている。これからの報道の課題は、日本がどういう道を歩んでいけばいいのか、一人一人が判断できる材料を提供していくこと。両論併記である必要はなく、幾つかのシナリオや考え方を示すことでもできるはずだ。

 梅野修編集局長 これまでは政治家や公的機関がメッセージを発する際、メディアが仲介役になっていた。だが、今やトランプ氏のように直接、有権者に働き掛けられるようになった。既存メディアも厳しい視線にさらされている。事実を積み重ね本物のニュースを提供していきたい。

米大統領令
米大統領令 立法手続きを経ずに米大統領が直接、連邦政府機関や軍に発する命令。議会は大統領令の内容を覆したり修正したりする法律を制定することで対抗できる。予算措置が必要な場合、議会の承認が必要となる。大統領令の内容が憲法に反する場合は、最高裁が違憲判断を示して無効とされることもある。

【テーマ2】文部科学省の天下り問題

他省庁の実態は--後藤氏 負の関係解明を--三浦氏 天下り問題は入口--清水氏

 ▽他省庁
衆院予算委に出席し、挙手する文科省人事課OBの嶋貫和男氏。右は前川喜平前事務次官=2月

衆院予算委に出席し、挙手する文科省人事課OBの嶋貫和男氏。右は前川喜平前事務次官=2月

 後藤委員 文部科学省事務次官の辞任、同省の組織的関与などが次々出てきた。決して文科省びいきではないが、なぜうちの省だけたたかれるという嘆きもよく分かる。文科省は天下りの方法が稚拙だったという声もある。ならばほかの省庁は巧妙な仕組みをどうやって作り、天下り先を開拓しているのか。他省庁の実態も知りたい。

 大辻一晃地域報道部長 今回の天下りは明白な法違反もあれば、人事課OBによるあっせんを、監視委員会が法令の網の目をくぐり抜けるものとして問題視したケースもある。他省庁の実態はよく取材する必要があり、法違反や処罰対象とならないものも取材していきたい。

 三浦委員 文科省は大学の教員定数にも予算配分によって影響力を持っている。省出身者の面倒を見るなど同省が望む方向で運営しないと大学は補助金も減らされる。大学に対する負の関係のスパイラルをぜひ解き明かしてほしい。天下りあっせんに関係のない大学も取材対象にしてよいのではないか。

 石川義彦社会部長 大学と文科省は、教育政策を実施する側と教育政策を立案する側であり、垣根がもともと非常に低かった。大学の自治がどこまで脅かされているのか、掘り下げていきたい。

 ▽2本柱
文部科学省の天下りシステム

 清水委員 文科省事業では、大学の授業を英語でするため、海外から呼んだ先生が事業終了の途端にお払い箱となるケースがある。その一方で文科省からは天下りがくる。世界から優秀な人材が日本の大学に集まらない仕組みを実は文科省が作っており、役人の席を確保するために大学があるように思えてしまう。天下り問題を、むしろ入り口と捉えて、日本の大学のあるべき方向性の問題と、官僚の再就職問題という2本柱で取り上げていくべきだ。

 後藤委員 天下りの背景にはキャリア官僚では次官になるのが1人の熾烈(しれつ)なトップ争いがある。50代後半ぐらいから肩たたきが始まって、天下り先を構造として見つけざるを得ない面もある。

 大辻地域報道部長 2本柱に整理することは全くその通りと考える。それぞれの原因や問題点を伝えていくよう心掛けたい。

 梅野編集局長 天下りは官民癒着の典型で、受け入れ側にも情報収集、予算獲得などのため一定の需要があり、根絶は難しいかもしれないが、社会の目線は厳しい。文科省に限らず他省庁の実態も取材課題としたい。

文部科学省の天下り問題
内閣府の再就職等監視委員会が1月、文部科学省元高等教育局長が2015年、早稲田大教授として再就職した際に、国家公務員法違反に当たる在職中の求職活動などがあったと認定した。人事課OBを調整役とする組織的な再就職あっせんの仕組みも省主導で作られたことが判明した。違法案件は現状で約60件に上っている。監視委から全容解明を求められた同省は外部の弁護士も加えた調査班を設置、職員からの聞き取りなどを進めており、月内に最終報告をまとめる。

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