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第37回会議(福田康夫前首相辞任以降の政治報道、米大統領選)

分析、解説記事に重点を   「報道と読者」委員会 

 共同通信社は13日、外部識者による第三者機関「報道と読者」委員会の第37回会議を東京都港区の本社で開き、3人の委員が「福田康夫前首相辞任以降の政治報道」と「米大統領選」をテーマに議論した。

「報道と読者」委員会で議論する(左から)五十嵐公利、佐和隆光、林陽子の各委員=13日、東京・東新橋の共同通信社

 福田氏辞任と麻生太郎首相就任後の一連の報道に関し、ジャーナリストの五十嵐公利氏は「一つ一つの現象がよく分かる半面、それがどういう意味や背景を持つかを分析する記事が少なかったのではないか」と問題提起。

 弁護士の林陽子氏も政治の分析、解説記事に重点を置くよう求め、衆院解散・総選挙報道について「民主党政権が誕生するかもしれないという時期に来ている。今までの自民、公明両党の政権と何が違うのかという長期的な視野に立った報道を期待したい」と述べた。

 自民党総裁選をめぐり、立命館大教授の佐和隆光氏は、総裁候補の主張と同時に民主党の政策も紹介されていたとして「対立軸を鮮明にする意味で有権者に有益な情報だ」と評価した。

 黒人のオバマ氏が当選した米大統領選に関しては、五十嵐氏が「(米国内で起こった)地殻変動を選挙中からフォローする余地があったのではないか」と指摘。林氏は女性のヒラリー・クリントン氏が民主党候補指名争いで敗れたことに「どうして候補になれなかったのか。もう少し掘り下げてほしかった」と注文をつけた。

 米国発の金融危機や景気後退を踏まえ、佐和氏は「オバマ次期政権にとって自動車産業をどうするかが課題だ。日本にも相当な影響が及ぶ」と日米関係や経済問題を含む幅広い報道を求めた。


政策対立軸示す報道を  「報道と読者」委員会 

 共同通信社の第三者機関「報道と読者」委員会の第37回会議が13日開かれ、3人の委員が「福田前首相辞任以降の政治報道」と「米大統領選」をテーマに議論した。

 政治報道でジャーナリストの五十嵐公利氏は一つ一つの現象はよく分かるが、分析的な記事が薄かったと指摘。立命館大教授の佐和隆光氏は二大政党時代を見据え、政策の対立軸を明確に示す報道に期待を示した。

 米大統領選をめぐっては、弁護士の林陽子氏が女性のヒラリー・クリントン氏が民主党候補指名争いに敗れた背景を掘り下げた記事が欲しかったと注文を付けた。

【テーマ1】福田首相辞任以降の政治報道

長期的視野で報道を―林氏  背景の分析を―五十嵐氏  対立軸を鮮明に―佐和氏

 

 ―福田康夫前首相辞任以降の政治報道にどんな感想を持ったか。

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五十嵐委員

 五十嵐委員 いろいろな現象が細かくフォローされてよく分かる半面、その現象がどういう意味を持っていて、どのようなバックグラウンドの中で出てきた話かという分析的な内容の記事が少し少なかった感じがした。

 佐和委員 小泉純一郎元首相が辞めた後の政治状況は新聞読者には極めて理解しにくい。

佐和委員

 林委員 この間、3週間ぐらい海外に出ていた。今は海外出張中でもインターネットで日本の政治のことが分かるが、ネットと新聞では情報量が全然違う。新聞を読んでいないと物事が分からなくなると今回特に感じた。日本の新聞は、新聞の強みにもっと自信を持っていい。ただ、現象を追うと同時に、分析や原因をどう読者に分かりやすく報道するかに関しては、まだ少し研究の余地があるのではないか。

林委員

 橋詰邦弘政治部長 福田前首相の退陣表明から政局報道がスタートした。一つ一つの現象を追うのはもちろんだがその背景にあるものは何か、インターネットとの違いを出すため検証報道を充実させることを基本姿勢にしてきた。自民党総裁選報道では、5候補の政策、主張の対比に民主党も加えることを心掛けた。

 ―まず、福田辞任から麻生政権誕生に至る報道については。

 佐和委員 一般読者から見れば、福田退陣はほとんど予想外だった。政治記者の間ではどうだったのだろうか。

 林委員 辞めた大義名分が何だったのかよく分からない。あるいは本当に嫌になって投げ出したのか。どう理解すればいいのかいまだに読み切れない。首相が2人も投げ出す形で政治のトップの座を降りたことには、日本の政治の構造的な問題、つまり政治家のリーダーシップが陶冶(とうや)されていないことや、自民、公明両党の連携の問題などがあったと思う。それについて「だからこの物語はこういうふうに読めばいい」と解説を付けると、読者としてはもっと分かりやすかった。

 ―「劇場型」の報道はやめようという流れの中で自民総裁選報道をどう評価しているか。

選出された麻生氏

衆院本会議で首相に指名され、祝福の拍手を受ける自民党の麻生総裁=9月24日

 五十嵐委員 テレビも2005年の「郵政選挙」のトラウマ(心的外傷)があり、今回はあまり目の前のことに飛び付かないで済んだとの印象を持っている。

 林委員 5候補の政策対比で、野党の政策にも触れたのは報道の視点として優れている。今回、小池百合子元防衛相が女性として初めて総裁選に出馬した。長く女性運動をやっている人たちも、(小池氏は)女性の力で出てきたのではないだろうとみている。米大統領選におけるヒラリー・クリントン氏とどう違うのかという評論があればと思った。

 佐和委員 日本でも小選挙区制が導入されて以来、やがて二大政党制が定着することは確実だ。そうなると、両者の対立軸を鮮明にする必要がある。自民、民主両党の具体的な政策のメニューがしばしば新聞に掲載されるのは、選挙民にとって大変有益な情報だ。

 ―衆院解散・総選挙時期をめぐる与野党攻防に関する報道はどうか。

 林委員 政治家自身がいつ解散になるか分からない中で、暗中模索の政治活動をしていた。解散時期の報道がマスコミのフライングだったとの論調もあるが、私は特に感じなかった。ただ長い目で、それぞれの政党の政策を有権者に伝えていく役割がマスコミにある。特に今、民主党政権が誕生するかもしれない時期にきているので、自民、公明両党の政権との違いは何なのか、より長期的な視野に立った分かりやすい報道を期待したい。

 五十嵐委員 (解散時期は)麻生太郎首相自身が揺れていたのだから、観測記事が多少ぶれるのは仕方がない。それと論説は別で、「民意を問うべし」との記事は良かったし、当然。

 橋詰政治部長 今後の選挙報道では、各党のマニフェスト(政権公約)を報道、分析すると同時に、小泉元首相による「郵政選挙」後の3年間余りの業績評価を重視したい。

 五十嵐委員 自民党がその歴史的役割を終えたのではないかとの指摘がある。いろいろな連載企画の中で、そういうことも取り上げてもらえたら、非常に興味を持って読むことができる。

 佐和委員 麻生内閣の自民党と、小沢一郎代表の民主党の政策的な差異化が難しくなっている。

 林委員 佐和委員の意見に共感する。小沢氏が「官僚中心の統治機構の全面的な改革」を言えば言うほど、旧来型の族議員の政治やばらまきにつながっているのではないか。健全な批判は力を付けてきた人たちにももっと向けられるべきだ。来年は日本の歴史が変わるかどうかという時期で、報道に期待していると強調したい。

衆院解散・総選挙
 衆院解散・総選挙 衆院議員の4年の任期満了前にその地位を失わせること。任期満了や解散に伴う衆院選は、議員全員を一度に選ぶことから「総選挙」と呼ばれる。前回2005年9月の「郵政選挙」による現議員の任期は09年9月10日まで。麻生太郎首相は当初、「10月解散、11月総選挙」を模索したが、世界的な金融危機や景気後退を受け、「政局より政策」を唱えて先送り。戦後行われた衆院選は計23回。解散は計22回で、任期満了は1976年12月、三木内閣当時の「ロッキード選挙」だけだ。


【テーマ2】米大統領選


地殻変動起きた―五十嵐氏  女性差別に迫れ―林氏  経済の視点が重要―佐和氏


 ―米大統領選の報道の狙いは。

 中川潔外信部長 米社会がどう変化しているのか伝えたいと考えた。イラク戦争後の対外政策に国民がどんな選択をするか、人種問題で社会が本当に変わったのかどうかを占うとみて手厚く報道した。

次期米国務長官に選んだヒラリー・クリントン上院議員(右)を紹介するバラク・オバマ次期大統領=12月1日、シカゴ(ロイター=共同)

 ―全体の印象は。

 林委員 ヒラリー・クリントン氏がなぜ候補になれなかったのか。イラク戦争開戦に賛成したことや、女性が核のボタンを握る状況を国民が受け入れていない、などと欧米のメディアで言われた。ジェンダー学では「女性と戦争」は大きなテーマ。女性の政治指導者になお残る偏見や抵抗感をもう少し出していただければ、もっと面白い選挙報道になった。

 佐和委員 米国はこの8年間、単独行動主義でやってきた。保守主義が異端を排除するという意味では、まさに排除の対象となる人が大統領選で勝利を収めた。米国は人種のるつぼと言われるように、もともと多様性を認める国だったのだから、原点に戻ったといえる。ブッシュ大統領の8年間は異常な8年間だった。

 五十嵐委員 ブッシュ大統領が非常に特異だったかと言えば、必ずしもそうではない。単独行動主義か多国間主義かいつも揺れ動いている。地殻変動という点で節目だったことには賛成だが、その原因になったインターネットやジェネレーションなどの問題の指摘は予備選の時からあった。そういう地殻変動の「芽」をフォローする余地があったのではないか。記事に「新しい米国像」が出てくるが、その中身が伝わってこない。

 中川外信部長 どうして地殻変動が起きたのかをリアルタイムで報道できていないと、われわれも感じている。

 佐和委員 投票行動を分析した記事やグラフを見ると、若い人や女性、白人の多くがオバマ候補を支持していることが分かる。オバマ氏の勝利演説の記事にある「米国の新たな夜明け」の様子が伝わってくる。

 林委員 激戦州ルポが面白かった。自分の家で(オバマ候補支持の)看板を立てた写真があり、アメリカ人らしいなと思った。日本で民主党政権誕生を願って自宅前に小沢(一郎)さんの看板を出すだろうか。

 ―今後、どんな報道を期待するか。

 林委員 保護主義や対日貿易赤字が日本経済に及ぼす影響をもっと知りたい。米国は日本を飛び越して中国と経済的にも政治的にも強い関係を結んでいくのか、日米の強い同盟関係は維持していけるのかを、広い視野から報道してほしい。

 佐和委員 今回の大統領選が日本の民主党に有利に働くのは間違いない。自動車産業に保護的な措置が講じられ、輸入車に関税が課される、あるいは自主規制のようなことが起これば、日本経済に相当な悪影響が及ぶ。そうした視点からの報道もほしい。

 五十嵐委員 米国の政府や政策ががらっと変われば何が起きるのか注意すべきだ。米国を見る場合に中国を含めて見ていく必要がある。また、大統領選でインターネットが果たした役割なども日本の参考になると思われるので、知りたい。









米大統領選
 米大統領選 2008年1月のアイオワ州を皮切りに選挙戦がスタート。民主党は上院議員のヒラリー・クリントン、バラク・オバマ両氏の対決となり、8月の党大会でオバマ氏を大統領候補に選出。共和党は9月の党大会でジョン・マケイン上院議員を選出した。11月4日の本選では「変革」を掲げるオバマ氏が、経験を誇るマケイン氏を大差で破った。黒人の大統領は史上初で、09年1月20日に就任する。同時に実施された連邦議会選でも、民主党が上下両院で過半数を獲得した。


新聞の役割に期待  委員の提言


 この一年を振り返り、今後の報道に対する各委員の期待を聞いた。

 林委員 インターネット時代における新聞の役割がますます問われている。サイトの情報と勝負をつけるためには、検証報道、調査報道が一番だ。問題発見能力を高めるとともに、読者に分かりやすく報道することを継続してやってほしい。

 佐和委員 新聞の役割は、政治や経済の報道において高まることはあっても、低下することはあり得ない。ただし若者の新聞離れは否定できないので、読者を引きつけるよう努力してほしい。また、的を射た平易で理解しやすい解説記事を期待したい。

 五十嵐委員 日々、目の前で起きている出来事を解釈すること以上に、それを長いスパンで見ることが必要。われわれはいろいろな資料を使ってトレンドを予想するが、そうなるかどうかは国のリーダーシップによる。そういうことを考える上でも、少し目を先の方に向けることが必要だ。

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